関西人のたわ言《2004年》 ←2003年2005年→

2004/12/07 セキュリティと利便性
2004/11/17 日本が誇る引き際の美学
2004/10/15 調子のいい議員と記憶力の悪い国民
2004/08/27 羹に懲りて膾を吹く
2004/04/07 円高不況からはや20年
2004/03/12 民は知るべからず、知らしむべからず
2004/02/18 証券会社のアドバイザリー能力
2004/02/09 公共事業の収益性
2004/02/06 株主還元のありかた




セキュリティと利便性 2004.12.07(火)
静脈認証システム  金融犯罪や資金洗浄などを防ぐために本人確認が徐々に強化されている。記憶にある昔の地方都市での銀行の姿とは、取引は窓口のみでお客は常連さんばっかし、ある意味で本人確認は常に行なわれていたように思われる。振込入金があれば電話がかかってくるし、信用金庫の基本は個宅訪問、農協は正委員との取引を中心としていた。
 1970年代初頭に住友銀行が開発したCDが普及するに従い、民間企業でも現金取引が減少しATMは生活に欠かせないものとなった。それはそれで経済利便性を拡大させたが、一方で顔の見えない取引を増やすことになり、モラル無き犯罪行為により問題が起こり始めた。
 銀行に対して「本人確認が面倒くさい」とか、「ATMばかりに頼らず窓口で対応せよ」とか、「銀行独特の勘定単位である店舗ベースの管理はなんとかならんのか」などと結構言っているが言うつもりは無い。ただ、セキュリティ認証を暗証番号から生体認証に移行させるのは問題があろう。経済の最小単位が「家計」であるこの国では、旦那さんの口座から奥様が現金を引き出すことが日常茶飯事で行われており、代理人カード方式を含め、これにどう対応してゆくのであろうか。 それにモラル無き犯罪に巻き込まれれば、取られるのはお金だけに留まらず、命の危険も発生する
 「静脈認証は皆様の安全のため」とか上っ面で体裁の良いことばかり言うんじゃなくて、もっと抜本的に金融システムのあり方を見直すべき時期なのではと考えている。
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日本が誇る引き際の美学 2004.11.17(水)
大関武双山  現在、大相撲九州場所が行われているが、これまで頑張ってきた大関「武双山」が本日引退を表明し、年寄「藤島」を襲名した。その去り際は潔い出羽の海一門らしい引退であった。
 相撲という競技は、今も昔も神事であり国技であるだけに、スポーツとして捉えた場合に複雑な面を持っている。例を挙げるならば、スポーツでは審判役とされる「行司」が存在するものの、行司の判定に「引き分け」は存在しない。そして、行司の判定とは別に最終決定は勝負審判が行い、勝負審判は「取り直し」という事実上の「引き分け」が認められている。その上、競技開始の合図は両力士の阿吽の呼吸に任されるなど、一般的なスポーツとの差分は枚挙に暇が無い。
 神事であることから来る最大の相違点は、礼節が重んじられ真っ向勝負でない勝ち方は上位力士の場合は評価されず、上位力士はコンディションの状態に関係なく完全なる勝利を求められている点である。書いているうちに外人に伝える文章の様になってきたが、要は、引退の理由も「限界までやれるだけ頑張る」ではなく、「惜しまれつつ引退」であることが暗に求められるなど、極めてオールドファッションな世界なのである。
 だから若い人に人気が出ないとか、ファン層が拡大しないとか、識者と言われる人々はコメントするが、何でもありなこのご時世において、一つぐらい融通が利かない堅苦しい世界があっても良いのではと「潔い引退」という文字を見ながら考えてみた。
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調子のいい議員と記憶力の悪い国民 2004.10.15(金)
 1988年4月1日、JR7社が発足すると同時に日本国有鉄道は解散し国鉄清算事業団に債務が移行された。その10年後の1998年10月22日に日本国有鉄道清算事業団は解散し、日本鉄道建設公団内に置かれた国鉄清算事業本部に債務は再度移管された。そして2003年10月1日に日本鉄道建設公団が独立行政法人化の波に乗って解散し、現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構国鉄清算事業本部に債務が移管されている。
 1988年当時の国鉄債務は37兆円を超えていたが、新生JR各社や各部署へ負債負担を移し、国鉄清算事業団は25兆円を承継するに至った。その後の経済原理を無視した土地政策などにより清算事業団の債務返済は進まず、年金債務など逆に増加し今なお多くの金額が未返済となっている。
 国民として注意すべき点は、25兆円の債務返済原資が当初から保有土地とJR株式、そして国民負担(13.8兆円)でまかなう予定であった事である。高級官僚が考えた「土地高騰時に土地売却は更なる過熱を生みかねない」という不思議な経済学により、支離滅裂な政治判断が下され、もっとも安い時期に土地売却をした過去を考えると、国民負担分は明らかに増加している。
 あれから20年近く経っており、先生方は当時の約束などすっかり忘れて「(業績の良い)JR各社に追加負担をさせよ!」と騒ぎ立てるであろうが、これは取りやすいところ取ると言う発泡酒と同じ戦略であり、世論で厳しく反対すべきである。発泡酒の時はビール会社の肩を持ったマスコミが国鉄問題でJR各社を突き放すのであるなら、何を得るために「マスコミは興味本位」というそしりを甘んじて受けるのであろうか。
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羹に懲りて膾を吹く 2004.08.27(金)
JAL747-200  日本の航空産業は先の大戦終了後、連合国軍から一切の施設と研究を凍結された結果、世界の潮流に遅れまくりYS-11の開発でなんとか世界の土俵に返り咲く経緯を持っている。一方で、運営会社は準国営の日本航空と民間企業数社で業務を再開した歴史がある。
 その後の航空業界は、かの有名な「若狭裁定」などに代表される官製談合時代が長く続いたが、航空運賃の準自由化を境にうごめき始め、2000年に日本航空と日本エアシステムが統合し2社寡占状況に突入した。
 一気に発着枠を増加させたJJ連合は、割引運賃の断続的な導入に加え、「1日10,000円ポッキリ」という意味不明と言うより滑稽な料金競争策を掲げ、国内王者のANAに宣戦布告。国内シェアは大変動時代を迎える。
 国際線では2001/09/11にあの国際事件が発生し、JJ連合は国内で暴れるための資金源である国際線収益を毀損。反対にANAが起死回生に向けて飛ばし始めた中国線が経済成長で大躍進するが、SARSの発生などで厳しい展開を迎えるなど混戦模様が続いている。
 両者どちらも傷を負っての競争であるが、やはり2001/09/11に起源を持つこのところの原油価格高騰が明暗を分けた。まともな経済原理に則り経営立直しに走るANAと、羹に懲りて膾を吹きすぎるJAL。他の業界から見るとANAの戦略は低レベルであるが、優劣判定の俎上にも上らないJALの戦略には勝った様子。一言いうのなら、「JALはあまりに行けてない」と嘆くのではなく「さすがは官製談合業界」と関心するべきなのである。
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円高不況からはや20年 2004.04.07(水)
 1980年代後半のプラザ合意から始まる円高により、輸出産業がバタバタと倒れたことを当時中学生であったが今でもよく覚えている。
 倒れたのは何も輸出産業だけでなく、コンテナ運賃の恐ろしいまでの値下がりと、収入のほとんどがドルベースという仕組みを持っていた「海運業」も同様に憂き目を見ている。その業績の悪さは、1980年代末にかけて日本中の株価が暴騰するなかで、海運業が100円〜200円で放置プレイされた唯一の業種であることからもよく解る。
 海運業界は1960年代まで1$=360円の価格競争力と政府の傾斜生産方式に合わせて大躍進するが、ニクソンショックの後に1回目の大合併を行い、件の円高不況後に2度目の大合併を余儀なくされている。例えば1999年に合併した「商船三井」で行くと、片方の「大阪商船三井船舶」は1963年に「大阪商船」と「三井船舶」が合併したものであるし、相方のナビックスラインは1990年に「ジャパンライン(1964年に日東商船と大同海運が合併)」と「山下新日本汽船(1964年に山下汽船と新日本汽船が合併)」が合併した会社である。
 製紙業界も合併の歴史が深いが、海運業界も相当なものである。かつて海運王国であり海外との輸出入がいまだに大規模で行なわれている日本に、海運会社が事実上3社しか残っていないことを考えると、銀行の再編とか鉄鋼業界の再編なんてのは甘いものといえるのだろう。
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民は知るべからず、知らしむべからず 2004.03.12(金)
 国民の3大義務である納税のシーズンが終盤を迎えている。個人および個人事業者は好むと好まざると暦年課税を押し付けられており、毎年この時期が確定申告の時期となっている(法律に則ると「決算の末日の翌日から2ヶ月以内」なので1月1日から2月28日までだが、特例的にやってるようですな)。
 「税金は実に面倒です、確定申告は金持ちの仕事です。」国税庁はそんなイメージを国民に植え付けようと画策しているが、そうあっさりボラれる訳にはいかんので、年が明けるとせっせと準備して申告を行っている。
 そんな努力が実り確定申告がピークを迎えつつあるにもかかわらず、早々と還付金が振込まれた。マスコミや金融雑誌的にいくなら「ありがたい話である・・・」となるのであろうが、そもそも払わなくても良かった金が返って来ただけの話であり、なんら得した訳ではないのである。これは年末調整と同じで、そもそも私の資産なのです。まあ、そんなことで声を荒げるのは大人気ないのでで、おとなしく「ごっつあんです」と頂いておく。
 毎年申告しながら「去年もよーけ税金納めたなぁ」と思い、あんじょう使こてやとお国に祈らずにはいられない。マスコミが「たくさん稼いだ」とうらやましげに報道する高額納税者であるが、あの方々は「たくさん税金を納めた方」であり敬うべき方々である。間違っても変な詮索などしてはならんのである。
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勘違いした正義感と記憶に残る痛み 2004.02.20(金)
 先日(2/19日)、新生銀行(旧日本長期信用銀行)が株式市場にリバイバル上場しました。公募価格525円に対し上場発値は872円となかなかの人気振りでした。初値の騰落率が66%とやや過熱気味であったことから、初値以降は軟調な相場展開が続き、翌日には700円台前半まで落ち込むことに成りましたが一貫して評価は高い様子です。
 破綻後国有化された長銀を買い取ったリップルウッドは、今回の上場により「数千億円の株売却益とその数倍の含み益」を確保しており、日本国民の税金で米国資本を儲けさせたとか、瑕疵担保契約はやりすぎだったといった論調が結構あります。この日本長期信用銀行は記憶が薄れつつありますが「金融システムの維持」の御旗の元、約8兆円の公的資金を使い救済した銀行です。特に、預金者保護の観点から預金保険機構は3兆7000億円を贈与しており、ここは全くの損失です。

 現時点の結果論から見ると、リップルウッドの商行為は「ぬれ手でアワ」に見えますが、破たん当時日本の企業は金があったにも関わらず、リスクを恐れてどこも長銀を引き受けませんでした。このままでは破綻という最後の最後になってリップルウッドが引き受けてくれたのが過去の事実です。リスクを負って得た利益に対し、今さら『もうけるのはずるい』というのは、単なるやっかみで、あたかも不労所得のように指弾するのは大間違いです。
 帰らない公的資金をどのように納得すべきかと言えば、破綻回避の為に政治が決断して捨てた税金ですから、授業料と考えるしかないのです。そこまでして守った金融システムに価値があったかどうか、その辺りを政治に問い直す他ないでしょう。
 また、瑕疵担保契約のおかげで債権不良化リスクを逃れ、国の政策に構わず「貸し剥がし」を行い収益を改善させたと批判する論調もありますが、瑕疵担保を付与したのも政治判断であり、「貸し剥がし」については、口頭ベースという不透明な大蔵行政が、百戦錬磨の海外ファンドに通じると思っていた大蔵省の甘さが原因です。その結果、同業の銀行が不良債権の肩代わりを余儀なくされたのも当然です。
 確かに新生銀行の高収益は、国や日本の銀行に損失を肩代わりさせた結果です。国民の負担で新生銀行は成功に至ったのです。そういう意味では利益追求の為に多くの日本企業が犠牲になりました。でも考えてみると、新生銀行の収益基盤は預貸収益(貸金と預金の利ざや)ではなく手数料収入であり安定していません。貸出先を選別してるのか、取引を望む企業がないのか詳細は不明ですが、後者であるとするなら国民は自己犠牲を忘れてはおらず「記憶に残る痛み」が新生銀行の最大のリスクとして今後残るのではないでしょうか。
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証券会社のアドバイザリー能力 2004.02.18(水)
 最近巷をにぎわせているTOB(take over bit)いわゆる株式公開買付ですが、証券取引法の改正に伴い「有価証券の大量購入はTOBで行うべし」と成ってから、表に出る事が多くなってきました。その昔はグリーンメーラーとか乗取り屋とか言う言葉から分かるように、買い手側が一方的に悪者扱いされたのですが、昨今では会社経営陣の経営能力の悪さも非難されるようになってきているように感じます。
 新聞に公開されるTOBは、俗に「友好的TOB」と言われる買い手と売り手の間で合意が成されているものが大半でありますが、このところ「敵対的TOB」が2件続けて公表されました。その中味や進展に伴うドラマを見ていると、被買収企業の幹事証券のアドバイザー能力の限界が見えてきます。

 2003年12月19日、米系投資ファンドのスティール・パートナーズ(SPJ)は、ソトーに対しTOBを発表しました。期間は2004年1月26日までの39日間、価格は1,150円、株数は319万株(既保有185万株と合計して33.34%)でした。このスティール・パートナーズは同日にユシロ化学に対してもTOBを仕掛けますが、ユシロ化学は幹事証券である野村證券の助言もあってか、19円→200円という大幅増配を発表し内部留保資産の取得を狙ったTOBはあっさり終了(応募なし)しました。
 ソトーの幹事証券は大和證券であり、大和證券は子会社のNIFベンチャーズを利用して、1月15日にSPJより高い1,250円で2月26日までのTOBを仕掛けます。これにソトーが賛同する形で対抗策を取ります。これはこれでユシロ化学とは異なる戦略であり斬新でした。ただ、このTOB合戦は泥沼化してしまいます。1月26日、SPJはTOB買付価格を1,400円に引き上げます。対抗してNIFは2月5日に1,470に更に上乗せを発表、SPJは2月12日に1,550円に再々度の引き上げを発表し譲らない覚悟を新聞広告に滲ませます。
 この辺りで大和證券の対応策は限界であったようです。これ以上の引き上げ合戦を継続すると、仮にSPJがTOBに成功しても内部留保資金の確保だけではTOB投資資金を回収できず、本業の事業用資産を切り売りする可能性があるとソトー側は判断し、2月16日にNIFのTOBへの賛同を撤回し、今期について13円→200円配当、来期、さ来期で300円の配当を行うことを発表しました。

 早々に増配で決着をつけた野村証券、こじらせて結局増配となった大和證券、どちらが良かったのか分かりませんがその経緯は大きく分かれました。これまで幹事証券は、その引受け能力を生かして企業の資金調達の手助けが出来れば良かったのですが、最近では企業IRや配当政策、自社株償却などその役割は多様化しており、結果としてアドバイス能力が必要となっており、昔のように人的つながりで幹事証券が決まる事はなくなってきたのだと思います。大手証券はそういった事に気付いており対策が練れているようですが、中小はそういう訳にもいかず、企業格差は体力以上に開いています
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公共事業の収益性 2004.02.09(月)
羽田空港第四滑走路計画図  小泉内閣が打ち出した政策は数多くありますが、その中でも「都市再生」は有名な政策です。打ち出された当初は緊急整備地区が指定されたり、特区構想が出されたりと大盛り上がり大会の様相を呈しましたが、あれから早いもので3年が経ち、新聞やテレビのニュースに上ることはめっきり少なくなりました。
 ただ、政策は徐々に進行しており、今年の後半から再開発が本格的にスタートし始めています。羽田空港の第四滑走路計画も動き始めました。昔の羽田空港は陸地に近い部分のA滑走路をメインに使うしょぼめの空港でした。その後の第一次沖合展開により、平行滑走路(C滑走路)と新ターミナル(ビックバード)を備える空港となりました。そして今、第二次沖合展開が終盤を迎えており、東ターミナルビルとホテルが開業間近となっています。そして今、国際化を視野に入れつつ東京国際空港(羽田空港)の再拡張に着手し、年間発着回数を27万回から40万回に増加させ、地方空港との連携を良くしようという腹積もりがなされています。
 この拡張工事は意味ある公共事業として動き、ここまではスムーズに来てますが、ここで国土交通省が「無駄な公共工事の抑制」という世論からか金をケチり、東京都や周辺自治体も金を出せとごね始めました。その結果、工法の選定や入札が遅れる結果となっています。また地面は公共工事で行うが、上物はPFIで行うと言い出すなど、ますます遅れる結果となっています。
 公共工事は採算が取れない−まことしとやかにマスコミが、議員の先生が、コメントを出します。では公共工事の採算とはいったい何なのでしょうか?収入と支出のバランスだと言われそうですが、公共工事の収入は現金などの実収入に加え、事業によって得られる便益(生活の改善などの経済効果)を勘案する必要があるはずです。なんかこの議論が抜け落ちているように思えてなりません。便益拡大による経済効果の為に行うのが公共事業です。作ることで便利になる人がいて、その経済効果が投下資本に見合うなら公共工事は無駄ではないのです。個人の収支感覚で「公共工事は無駄」と決め付けるのは、政策を間違った方向に導きかねませんので、注意して議論を見守る必要があるように思います。「税金は富の再配分」ということを良く考えて発言をしてもらいたいものです。
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株主還元のありかた 2004.02.06(金)
 最近、企業経営者はIR活動の強化という名目で投資家の前に出て経営戦略などを語り、アナリスト連中から直接投げかけられる愚問に対し、辛抱強く対応する姿が見られるようになって来ました。株式の公開により数多くの投資家から資金を募っている企業として、この姿勢の変化は評価に値します。ただ、その方向性には疑問を持たざるを得ない場合が多いのです。

 おそらく経営サイドは、外部の調査会社やコンサルタントから指導を受け、投資家にどう接するのか『株主還元』と言うものをどう扱えばよいのか検討していると思われます。経営陣や経営トップが投資家と直に語り合うことは、投資家にとって経営戦略を理解する上で大変重要な情報になりますし、経営陣も第三者から意見を聞くことで、戦略判断の参考にしたり、新しい考えにつながるなどメリットがあると思われます。
 ただし、『株主還元』は間違った方向に誘導されているように感じています。日本は生産性を効率化することで、まだまだ利益を拡大できる経済状況にありますので、配当を行い、わざわざ資金を社外に流出させることは懸命ではありません。これまでは株式の持ち合い制度などに支援され、オーナー企業でもない限り外部流出は極力抑えられてきたのです。
 投資哲学の違いですから優劣はないと思いますが、海外投資家はこうした視点で事業を見ておりませんので当然ながら出資者に配当を出すよう求めます。また「自社株償却」を強く求めるのです。この「自社株償却」に日本企業が最近前向きです。理由としては、持ち合い解消に伴う流動性への対応とか、配当総額の抑制などをあげてます。要するに資本コストの削減が第一命題であるようです。ですので低金利の現在では銀行借入をして自社株買いをすることが最も効率が良いとさえ言われているのです。市場も自社株買いはROEなどの指標改善に繋がるとして、好意的に見ている様子ですが、資本コストを削減するとは投資家から集めた資金を投資家が求める事業利回りで運営することが出来ません、ついては資金をお返ししますということであり、企業にとっての敗北宣言と取るべきであると思います。

 事業の成長性は時代に合わせて刻々と変化するので、集めた資金を返還することは十分ありうる話だと思いますし、自社株買いのもたらす効果にも反対はしません。ですが、今の「自社株償却」は成長性が消滅した事の証であり、株式市場は囃すことなく中立に見るべきだと思います。本当の意味の株主還元は配当の充実であり、資本圧縮ではなく利益向上によるROEの向上にあると思うのです。
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NINUKI.I.M